「大峰山女人禁制」の開放を求める会は、「女人禁制」の開放運動の一環として、「大峰山」を維持管理する関係者と「話し合い」をしたいと考えてきた。その「大峰山」を維持管理するのは、寺院と信者組織からなっているが、寺院は、三本山(聖護院、醍醐寺、金峯山寺)と五護持院(龍泉寺、喜蔵院、東南院、桜本坊、竹林院)である。 そしてこの度、護持院の一つである竹林院の住職福井良盟さんとの「話し合い」が実現した。日時は2011年4月23日11時30分から、場所は竹林院である。桜の名所として有名な奈良県吉野郡吉野山にある竹林院は、旅館を経営している。「話し合い」は、当旅館での昼食を兼ねて行うことになり、世話人会8人が参加した。千利休の作庭と伝わる庭園「群芳園」はちょうど桜が舞散る美しい季節でもあった。わたしたちは、「群芳園」を散策した後、旅館内の一室に通され、住職の福井さんとの「話し合い」が始まった。「住職の服装にしようかどうか迷ったが、その姿だと威圧感があるかもしれない」といわれ、ジャケット姿だった。 「食べながら聞いてください」 という福井さんのことばに、わたしたちは箸をとりながら「話し合い」をした。ちなみに昼食には懐石弁当をお願いした。 以下、1時間20分間にわたる「話し合い」の要旨は、後日、以下のようにまとめ、福井さんにも読んでいただき、HP上に載せる了解を得た。 なお、竹林院の寺伝によると、竹林院は聖徳太子が開創し、その後、名称が変わったりしながら1385年に現在の名称の寺院になったという。しかし、1868年の「神仏分離令」に伴い、1874年に廃寺となったが、その後、天台宗の寺院として復興し、戦後の1948年、新たに施行された現在の「宗教法人法」のもとで修験道系統の単立寺院となったという。つまり三本山とは宗派関係のない修験道の寺院である。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ 福井良盟さん(竹林院住職)との話し合い 2011年4月23日(土)11:30〜12:50 於:竹林院
・組織に関して 竹林院だけは本山に属さない 金峯山寺―東南院、桜本坊 醍醐寺―龍泉寺 聖護院―喜蔵院 ・1997年のスクープに関して 2000年に「女人結界」の撤廃を決定 三本山が協議し、五護持院は承認した スクープによって、「女人禁制」はそのままになった スクープ以来、「女人禁制」について話し合っていない ・「女人禁制」に関して 三本山は開放、五護持院は現状維持 役講(とくに堺の八役講)の開放への絶対的な反対がある 役講の役割(戸開け式など)が重要なので、その意見を聞かねばならない 信者は、「女人禁制」の開放に納得していない 開放するのに100年はかかる ・修行に関して 女性がいると修行できない 女性をケガレとは思っていない 男性登山者については、「アルプス」といい、無視するようにいわれた 15歳の新弟子には、女性がいると修行は無理である 山の聖地性を認めてほしい 男の本能かもしれない 「女人禁制」については、「甘え」論で許してほしい ・女性信者に関して 男性と女性の信者が、同じ物を着るのはいかがなものか 女性信者はほとんどいないし、連絡のとりようがない 信者募集のちらしなどに連絡先が書いてあるので調べられたらいい 50の講のうち3~4の講は女性の行者がいる ・地元の女性に関して 開放するなと泣いて訴えられた 女の涙には弱い
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「話し合い」後、わたしたちの感想は、「女人禁制」に対して、まったく前向きでない福井さんの態度に失望感があった。 「男の甘えを許してほしい」 といわれたときには、箸も止まり、唖然としてしまった。 2003年、わたしたちが運動を始めた当初に、「男の甘え」という人もいた。そして今回、改めて関係者のひとりから、同じことを聞いたのである。それは、「女人禁制」への「男の観念」が依然として変わらないことを直に聞き取ったということである。男性には、「体のいい言葉」であろうが、「開き直り」と理解するほかない。 「大峰山女人禁制」の開放を求める道は、このような陋習(いやしい習慣)に染まってきたとされる男性ジェンダー意識に男性自身がいかにして気づくのかという問題を提起したいと思う。また、男性だけではなく、あらゆる人の平等な世界へという願いに、関係者すべての人がいかに目覚めるのかという問題提起でもあるのだ。 福井さんとの「話し合い」には失望感があったが、「大峰山」側の寺院関係者との「話し合い」はこれからも続けたいと考えている。
(2011年 10月 1日 [土曜日])
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